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ココは元S-Silence管理人の日記とかエッセイモドキとかが徒然とごにょごにょしている空間です
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多分どんな遊びも突き詰めて行くと努力の部分に差し掛かる。
ギターを弾くのは遊びかも知れないが練習が要る。
ゲームをするのは遊びかも知れないが調べ物や作業が要る。
物語を書くのは遊びかも知れないが完結には推敲が要る。
遊びとは一体。

努力を努力と思わずに出来る事を遊びだと呼ぶならば、物語を書くことは特に私の遊びじゃない。
じゃあ何だ。習性か?
物語を書くのは自分にとっては「チキショー!」と叫んでいるのと同様で、あまりに思い通りにならない現状への不満が爆発して開始することが多い。じゃあ文句を言うのが遊びなのかと問われれば、なわけねえだろとなる。
ストレス発散を遊びだと呼ぶとしたら、物語を書くことは私の遊びかも知れない。

なんにせよ、掛け値なしで楽しいのは書けた後だけだ。
でもそこだけを遊びには出来ない。それは野球もしてないのにダイヤモンド一周して得点入れるみたいにありえない。
暴言かも知れないが、敢えて言おう。
ツイッター小説にも、起承転結は、要る。ぞ。
『プラスワン』とは何か、また、
『プラスワンの難易度』については以前に書いたが。


折角なので一番記憶に新しい奴を一つ書いてみようと思う。
難易度としては最高ランクに位置する超強力プロット作品。
「ダイの大冒険」プラスワンだ。
色々々々考えた末に辿り着いた結論からまず記す。



 魔族、女性、剣士、52歳。外見年齢はフローラさんくらい。
 ビキニアーマー系の巻毛美女。ペイルブルーの肌。特技は剣技と誘惑。
 登場時期は原作終了後。


 彼女は、戦士として名高い祖父を破ったらしいロンベルクを探して勝負を挑むために魔界を放浪していた。そして、ロンベルクが先のバーン戦時の人間の前に姿を表したという噂を聞きつけ地上にやってきた。しかしやっと見つけたロンベルクが両腕を負傷し戦闘不能状態と知って落胆。純粋に勝負を挑みたかった気持ちを燻ぶらせながらもやむ無く魔界に帰る事にする。
 そんな折に彼女は、行方不明のダイを探すために魔界へのガイドを探していたアバンの使徒とその仲間達に出会い、懇願されて渋々同行を許す。
 しかし彼女の性格は至って不真面目、奔放。自分の女としての魅力を自覚して最大限に武器として使用するタイプなので、ノヴァとかポップ辺りは散々に動揺させられる。
 それでも剣士としての腕前はロンベルクに挑みに来るだけのものはあるし、魔族故に魔力は高く基本的な魔法も使えるので道中での戦闘では鮮やかな活躍を見せる。だが如何せん大した目標もなく生きる彼女にとっては戦いはゲーム程度のものではあった。
 その時、魔界に到達した一行を待ち伏せる強敵があった。苦戦し、全滅の危機に遭遇したときクロコダインが彼女の盾になる。そして、義理もない我々に助力してくれた者にこれ以上の迷惑は掛ける訳にいかん、と逃げるよう彼女に促す。彼女は戦士たる自分が庇われる事に不快感を催すが、その反面、命を賭して仁義を貫こうとするクロコダインに感激もしてしまい、結果その場を共に戦って乗り切る事になる。
 それから少し興味を持ったクロコダインに得意の色仕掛けをしてみるのだが、これが全く以て通用しない、というか気付かれもしない。魔性の妖艶美女の筈が、対クロコダインでは恋愛初心者の小娘レベルにまで自信喪失。その様子は後々にメルルからは同情され、レオナからは大いにからかわれる事になる。
 戦いの続く中、クロコダインの武人としての高潔っぷりに日々惹かれる一方、自らのアプローチに対するあまりの手応えの無さに、やがて色恋の一切をスッパリ諦めて一人の戦士として側に居ようと思うようになる。
 そこから彼女の戦士としての一皮剥けっぷりが眩しかったら良いなあ。
 その後には戦士として成長した彼女が、逆に腑抜けたクロコダインを叱咤激励するシーンとかあったら良いなあ。



 で。
 このプラスワン実はめちゃ苦戦してて、ここに行き着くまでには根本的なキャラの全作り直しもあった。
 最初はやっぱ原作の進行中の時間軸にプラスワンしたかったんだけど、でもこの作品って世間でも有名な綿密プロット作品じゃないですか。そりゃ、もう1人でもキャラが欠けると物語の進行に支障が出るってくらいの綿密さで。それって1人足す隙もまた無いよねーってことで、最初は頭を捻って作中に既に存在する破邪の洞窟を擬人化してキャラにする事を思いついた。洞窟が洞窟でなく、何らかのキャラクターが破邪呪文を授けるってことにすれば、そうすれば必然性は原作の洞窟からそのまま受け継ぐことができるんじゃないかと。卑怯だけどホントこれくらいしかキャラを増やす隙が無いようにおもえて。でソイツをどんな性格と役割にしようかなと思った時、この作品って基本的にみんなが頑張って生きようとしてて、1人も死に逃げたいような奴は居ないよなと思いついた。それで考案してみたキャラが、ダイかポップと同じ年齢の少年。設定として、破邪呪文を契約で授けるのはその一族の長の役目で、例えばドラゴンの騎士とかと同じく1人だけに代々役目が受け継がれて行く。だから魔王軍は誰とも契約させない為に今まで少年を捕えて生殺しにしてた。少年は牢で長年辛い目にあって精根尽き果ててるので、出来れば早く楽になって世を去りたいと思ってる。……みたいな感じにしてみたが、これで具体的なストーリーを想定し始めるとすぐに破綻したね、アバン先生の存在で。そう、レオナがミナカトールを求める段階よりかなり前、既にアバン先生は先に接触してるんだよな。そうしたらその状態でいつまでも放っとかれてる訳ないし。そしたら移動もしちゃうし、レオナに逢えないし。
 それにその物理的な矛盾より何より、このキャラクターはこの作品に出すには暗すぎる。
 却下。全部やり直し。
 で、次の穴を探した。
 そういやこの作品って女性キャラの層が薄いのよなと思いつく。基本的に聖人タイプの完成した女性しか原作には居ないのよ。それじゃお色気バンバンの俗物にしようかなと。そして原作の女性は飽くまで女性的な役回りなので武力で第一線には来ないんで。じゃあ生粋のファイターにしようかなと。あと種族的な穴とビジュアルも考えて魔族にすることでキャラの骨格が出来上がった。
 でも最初はロンベルクの恋愛相手として連れてくるつもりだったのよね。けどさー、サブキャラ同士の恋愛はちょっと需要ないないよね。じゃあメインキャラで恋愛相手って誰よって時に、そういやあおっさんは嫁を探そうかなとか言ってたなと。じゃあおっさんと同年代、よりはちょっと気後れ煽るために年上とかにしてより魔族っぽくもして。けどおっさんはお色気では落ちないよなwww不憫wwみたいな感じで展開はすんなりと。最初は腹の立つ小娘然と登場して、後々は武人枠になる成長コースで魅せて欲しい。
 戦闘スタイルとしては魔法剣士。剣と魔法を同時に使えるのは竜の騎士だけだそうなので、黒のコアか聖石みたいな材質の剣に魔法を吸収してから、剣で勢い乗せて打つのが必殺技。ラーハルト同様に闘気はあまり使えない。そういうのは他にちらほらと居る得意な奴に任せんといかんしな。最終局面では、自分の体も使ってマホプラウスみたいに複数の呪文をを溜め込んだり、敵が攻撃として撃って来た呪文を吸収して打ちかえしたりもするが、どちらも半自爆の奥義として作品の盛り上がりに貢献して欲しい。女性枠からも瀕死者を出すぞ計画。
 時に、女性キャラ層が薄いって話だけど、仕方なくはあるよね。主人公はダイとポップなんだから。その二人だけを滅茶苦茶に掘り下げに来るのは仕方ない。でもほらボリュームが少なくても何かもっとドラマ的な見せ場ってあるじゃない。例えばヒュンケルは、やっぱ暗黒闘気で戦っちゃおうかしら、とか、このまま捕虜を続けて迷惑かけるなら死んじゃおっかな、とかいう揺らぎとその克服のシーンがあるじゃない。なら例えばマァムにも、ロンベルクに武器作ってくれって直談判しに行って「何で手加減しながら戦う癖のついてる奴に武器作んなきゃならねえんだ」って追い返されそうになった時に毅然と反論して唸らせてくれるシーンが有ったりしても良いんじゃないか。レオナも、ヒュンケルを裁いた直後にこっそり泣いてる所をダイに発見されて「国を治める者としては誇れる判断をしたつもりだけど、父を失った一人の女の子としてはヒュンケルを見るのは辛い」とか言い出しても良かったんじゃないかと。その後に段々と元不死騎団長のことを見直してったりしたらワシは喜んだ。
 しかしまあ実は、そんなこた別に良いんだけどな、男性キャラが素晴らしければそれで。それもワシ的真理ではある。こういうのはなー、後から〆切もなくウダウダ考えてるファンの方が絶対に色々と思いつくもんなんだなー。そこまで煽ってくれてるだけで大成功すぎるんだな。

 あー長かった。一番記憶が鮮明だから書く事が多かったってのを差し引いても、普段のプラスワンはここまで長くない。これが多分過去最長だなー。
『プラスワン』とは何なのかは以前に書いたが。

 困ったぞ。何か例としてひとつ、記憶に新しい作品でその事例を書いてみようと思ったのだが、最近ではすっかり超難敵にしか挑まなくなっていたので、綴ろうにも苦戦になりそうだ。


 その作品がプラスワンという遊びに於いて難敵かどうかは、原作のプロットの完成度や舞台設定に因る。
 例えば、日常を含むストーリーなら拵えたキャラを割り込ませられるスケジュール的な合間も多いが、目まぐるしい戦乱なんかだとどこで登場させればいいのかとか苦慮する。
 また例えば、元々の登場人物が少なければまだ居ないキャラ付けの穴も見つけやすいかも知れないが、それがメインキャラだけでもざくざく居たりしたら。しかも各々がそのキャラクター性でなければ成り立たない方法で物語の推進力となっていたりしたら、もう手の付け所がないほど新キャラ作成の隙が無い。

 なのになんで超難敵にしか挑まなくなったかっていうと、単純にその方が遊びが面白いからだ。つまり、凄くプラスワンがしやすい話ってのは、元々凄く必然性の低いキャラで構成された作品なんだと思う。なので足したキャラも浮かずに済むが、その他大勢の感もまた消しづらい。今その条件で思いついたのは幽遊白書かな。あれは当初のメインキャラの4人ですら最後は1人居なくなってたくらいの野放図プロットだし。そこへならどんなやつをどう出しても特におかしくはない、けどその分、いなくてもいいけどってレベルに留まる。
 プロットのガチガチ度ってのは作品のパラメータの一つでしかないだろうから、それだけで作品の優劣が決定するって訳じゃないだろうけど。
 ただこの遊びの素材としての向き不向きがあるってことだ。
 そう、これは飽くまで風呂や布団の中でボーっとしている時にやってる一人遊びなのだ。

 あんまり人には言ったことがない一人遊びの事なんだけど。
 今となってはプラスワンって名付けてる、昔からの趣味がある。それは既存の物語に自分で考えた登場人物を一人追加してみるという、自然発生した遊びだ。気づくともうかれこれ25年くらいやってるようだ。

 最初はルールなんてなく、ただ格好いいキャラを足してた。でも段々と気付いて行ったけど、生半可なキャストを増やして原作ベースで舞台を回したりしたら、場面のクオリティは元よりもダウンする。もしくは全く使い道がない、絡ませ方が分からないキャラになって浮く。

 登場人物には必然性が必要だ。……って頭痛が痛いような話しちゃったけど、案外本気で気付いてなかったことだった。これこそがルールだ。そして何より恐ろしい事なのは、完成度の高いプロットであるほど担える役目なんてもう残ってないってことだ。名作であるほど狙える枠がなく、必然性を持たせられない。

 先ず以て。キャラの必然性のレベルとして、こいつが居なきゃ物語が成立しないってヤツを外部から付け足すのは無理だ。そこは素直に諦めよう。
 プラスワンで狙える最高ランクはおそらく、既存キャラクター達の新たな一面を掘り返せるキャラ、その作品の人気派閥の一角を狙えるキャラ。この辺りが天だろう。
 そして最低限「居なくてもいいじゃん」とは思われない出来でなければならない。その時点で結構なハードルだが、クリアの為に満たすべき要素は、数としては少ないと考える。
「キャラに独自の役割はあるか」
「キャラに魅力はあるか」
 その二点に集約する。二点しかないが容易には満ちない。それをゴリゴリ図面を引き直して設計していくのが楽しいのだ。

 で。そうやって捻り出したキャラ一人をどうするのかって言うと、脳内の箱にしまい込むだけだ。別にその作品を再び見たら思い出すという事もない。成功してるのか失敗してるのかも分からない。これは飽くまで風呂や布団の中でボーっとしている時にやってる一人遊びなのだ。
師走に入り、今年の大掃除がやんわりとスタートした。
俺はかつてない抜本的な大掃除をしてキレイな家に住むんだ! という独自の改革に臨んでるつもりで、のつこつと数年が経った今、気がつくと世間ではそれに断捨離という名前がついてた。ちくしょう。
棚の隙間から見つかったB5クリアホルダに、大小の紙が挟まって黄ばんでいる。書いた自分すらも忘却した遠い昔のメモ書き群。
ホルダの見出しは「二次創作ネタ」
碌な予感はしない。

掃除してしまおう。
この紙は、キラキラネームの血液型付きキャラクタープロフィール、最上級の危険物だ。中二病原菌に侵されている。即刻シュレッダーしよう。ていうかこれ一次創作や。
この紙は、架空の人物が書いたラブレター。中二ながら内容は割と面白いな。ちょっと保留しよう。でもこれも一次創作やで。
この紙は、20年前に同人仲間との宴会芸で使ってた北斗の拳オープニングソング「愛を取りもどせ」の替え歌。手書きの歌詞カードが侘しい。いや活字の方がいたたまれないな。保留……いや二度と使わんやろ、いやもしかするとどうかな。
わかった。内容だけ此処に記して供養したのち処分しよう。

YouはShock! 俺のネタが 切れてくる
YouはShock! 俺のまぶた 降りてくる
〆切前さまよう心いま 力尽きてる
やや手を抜き無難に仕上がるはずさ
俺との本を上げる為 おまえは書き出し
明日が怖くなった
やっつけ仕事の本など 見たくはないさ
愛を取り戻せ

お疲れさまでした。
サイトがなくなる、と、一人感慨に耽るつもりが、消滅に伴い思いがけず方方からのメッセージを貰っている。仰るとおり、これまではweb拍手から頂いていたシズ誕の祝辞も今年が最後になるだろう。

私が青春時代を詰め込んだ文章サイトが尽く作品をweb上に残さず消えたのは、確かに私自身が痕跡を残すまいとした結果ではあるのだが。しかしながら骨も残らないというのは、現在なにも書かない身としては勝手ながら寂しいものだ。引退という感覚に近いのかも知れないが、野球選手じゃあるまいし。主観の引退感に過ぎない。

隣の人にどれだけの面白さが詰まっているのか知る機会は少ない。道を歩く人が、一緒に働く人が、それぞれどんな要素を抱えてるのか、普通は見せないし見えない。
この頭蓋骨の中の憂いも喜びも世間の人には見えず、私もただ人間の外観なだけだ。全ては取り出して披露するルートなくしては最初から無いものと同じだ。そのルートを表現と呼ぶと思ってる。

人前で泣けるか? それは一種のルートだ。頭の中身を外に出す。
例え床を鷲掴みにして震える程の感情も、ルートが無ければ世には存在できない。
私の場合は人前で大笑いする事は多々あっても、一粒も泣くことはない。その私の文章が哀感、ペーソス、カタルシスの言葉を以て評される事が多かったのは、果たして偶然なのだろうか。

かつてはルートを磨く事ばかりに精を出したが、今は殻の中身をぐるぐるかき回している。10年か20年、何も書かないだろうなと思ってからまだ今が数年目。次に何かを書く時はあるのか。あるなら私は果たして同じ名前なのだろうか。今はまだ何もない。
感傷的な文章は若い方が書きやすいのかと思ってたけど、多分それは若いからじゃなくて、若い方が心持ちが大きく揺らめく機会が多いからだろうな。
初めての出来事、環境の変化、守るものの無いがゆえの特攻。そんなこんなで若輩はイベントの宝庫だ。
もちろん感傷にはホルモンバランスの影響とかもあるんだろうけど、それを言い出したら年寄りは映画で感激しない生き物ってことにもなりかねん。そりゃないだろう。他力で動く胸の内なら、自力でも動くんだろう多分イベントさえあれば。
まあ確かに、感激した時に心臓がグギィーッと痛くなる現象とかは、年を取ると起こらなくなってくる。あれは生物としての戦闘モードONによる痛みらしいので、身体能力とリンクして衰えるんだろうな。

年寄りの方が経験により共感性が上がり涙もろい、とか言うけど。
年を取ると自分自身に起こるドラマは少なくなり、冷めていく。
なら、いつまでも自身をドラマの中に置くと、いつまでも爪を持つのか?
来年になったら、S-Silenceの入ってるサーバレンタルサービスが終了するらしい。
変化の早い世の中に於いて、これでも長いレンタルスペースだったのかな。
石碑だけでもそのまま置こうかと思っていたサイトだが、同じURLでないならもう置く意味もないだろう。

今でもweb拍手が途切れなかったのを、不思議に思って見つめていたのでメッセージは多分もれなく見ている。ただ私にはどこで何と返事をすればいいか分からないので、時だけが過ぎたが。

自分の青春時代なのだが、懐かしむにもほぼ他人の様で、数年に一度くらい無為に時間だけを消費してみたい時に読み返すと下手くそだなと思って加筆修正したくなりつつ、しかしやはり他人の物みたいでどうしたらいいか分からない。なので取り敢えずは過去の自分が決めた事を守り続けているが、この状況で何をしたら作者が満足したのかは自分にはわからないなと思いながら時間が過ぎている。
現在進行系の伝説漫画、ワンピースを597話まで読んだ。
今からその感想を言うがストーリーのネタバレはひとつもしない。只々、売上部数でギネス記録をもつ覇王漫画の力に納得したので、その力の内容にだけ感想を言う。


【全部が一続きの物語】
約61巻分、597話まで読んだがこれが物語の中程らしい。長い。週刊誌での連載なので仮に一年を52週とするなら11年以上は掛かってる計算だ。その間に一度たりとも物語が途切れる事はない。
長期連載物の多くは、1話読み切りの連続だったり、各エピソードごとにキャラクターと舞台のみを引き継いだ別の話だったりする。
1話読み切り系の長期作の代表は、同じ週刊少年ジャンプ内ならばこち亀だろうか。それはそれで毎回全く違う話を考えるのも苦労するとは聞く。
各エピソードごとに別の話なのは、あまり長期ではないが幽遊白書やドラゴンボール。あれらは、推測だが、私には人気が出たから物語を付け足したというものではないとは思えない。1エピソードが終わるごとに作者が新たな敵と物語を考案して作成しているよう思える。それはそれで、どうあっても面白く描き切るという凄まじいパワーなのだが、ワンピースはそれらと根本構造が違う。
物語全体が一度たりとも途切れないとはどういうことか。例えばもしも人気映画シリーズが2時間作品×60本作られているとするなら、対するワンピースはぶっ通しで120時間の上映をされているような感じだ。全部を見てなくては話が全く話にならないという巨大な起承転結の構造がある。
第1話から一貫して次々に据えられていく布石。台詞や行動、物の形に至るまでが、連載期間を何年も隔てた後々にも突如つながり感慨をもたらす。何処にも切れ目がない。
さすがは作品名がワンピースなだけある。


【ギャグとシリアスとリアリティ】
描き方の細部の話をすると、これはジャンル的にはいわゆる「ハチャメチャ冒険ファンタジー」に属するので、リアリティはあまり求められないジャンルではある。だが私は、シリアスの間にもギャグを挟むというだけでなく、そのギャグに因って起こる動きそのものまでが本筋にここまで絡んで良い世界観を初めて見た。
何を言ってるか分からねえだろうが俺にもさっぱり分からねえ。例えばクソくだらねえノリツッコミのお陰でピンチに陥ったとしても、そんな理由でピンチになるなという気がひとつも起こらないのだ。
それは或いは画力のお陰かも知れない。顔芸だけでも見てて楽しいし、楽しい時間には何の不満も湧かない。
それは或いは人物の性格メイクのお陰かも知れない。キャラは多数だが全員がド変態(いい意味)である。全員が徹頭徹尾ぶっ飛んでるならそれはもうその世界の法則だ。大体にして主人公はそれこそ冗談みたいな性格をしていて、それが物語の肝でもある。こうなったらもう何でもありだ。
勿論、優れたストーリーテラーの作として、物語の原動力となる謎や困難とその解消は理屈でもって鮮やかになされているのだが、それはそれ、これはこれ。その際に、別に都合よく助けが来たって良いし、別に「この間のジャンプ力を見る限りでは跳べる筈じゃん!」という亀裂に都合よく阻まれてしまっても良いのだ。展開も物理法則も、全てはご都合主義で織りなされるが、そういうリアリティなんて物語の面白さには関係ない世界があるのが改めてよく分かった。


【キャラの魅力を説得する力】
リアリティは関係ないと述べた矢先だが、この作品には超リアルな所がひとつある。
人の感情だ。多分それはこの物語の主成分だ。
これは先に述べた、全話が一つの物語だというのとも大きな関係があって、この物語は俗に○○編と呼ばれる各エピソードごとに読んでも面白くない。
実は私は、偶然リアルタイムで第1話掲載の週刊少年ジャンプを買っていた。読めば第1話だけで泣けるという大変に良い作品だったが残念ながらジャンプを買う習慣はなかった。
その後、何年かに一度は病院の待合などで偶然に手にして細切れに見たことがあったのだが、その時には、絵が上手いなという感想以外あまり持てなかったのだ。台詞回しや展開については大げさだなという印象を持っていたように思う。
まあ考えてみて欲しい。現実の人間でもそうだと思うが、台詞というのは誰が言ったかに因って印象が違う。パチンコで破産した人がゴロ寝で言う「俺はもう駄目だ」と、職場でずっと頑張りを見せてきた人が言う「俺はもう駄目だ」が同じ印象な訳がない。
細切れに読んだ時にはフーンと思った台詞は、第1話から通して読んでいって初めて心打たれる台詞になる。それはつまり長い物語を通じて私はその人をよく知っているという状態にあるからだ。
その人をよく知るのに必要なのは、先ずは会った時の印象。もっと深く知るなら、その人がどんな考えで以て、何が起きたときにはどう行動した人なのか、する人なのか。それは現実でも変わらないと思うが、この作品では現実には不可能なほどにそこを掘り下げる。何故なら「ハチャメチャ冒険ファンタジー」には、起こり得ない程の極限の状況と行動選択があるからだ。なんならその選択をさせる為にならどんなご都合主義をも厭っていない。そうやって非常に丁寧に一人ずつを根気強く掘り下げていく。どんなに滅茶苦茶なスケールで話が描かれても、常に人をリアルに描く事を中心に据えられているように感じる。だからこそ、キャラクターの感情と共にこちらの感情も衝撃的に動かしてくる、いわゆるボロ泣き回が訪れる。そのエネルギーは他の漫画に類を見ない。物語とは緊張と緩和だが、これはまるで長い時間を掛けて限界を超えてもまだ引っ張り続けたゴムがその緊張の末に大爆発するかように一気に弾ける。記憶を消してもう一度読みたいという人が居る理由がよく分かった。


【というわけで】
私は半分、というとてもキリの良い所まで読んだ。冊数にすると半分ではないのかも知れないが、これが半分だと確信できる「区切り目」までを読んだ。なので、以後は完結するまで読まない事にする。本当はリアルタイム連載時にちょこっと先まで見た事があるが、この際なかったことにする。
巷では現在96巻まで販売されており、その展開や作者の発言から2023年くらいで完結と予想されているらしい。それまで後2~3年。それは非常にこの「区切り目」にふさわしい期間なので、私も完結までぶっ通せるようになるその時まで、しばらく続きには進まない事にする。
もしかして完結したら新聞沙汰になるんじゃないか。まあ少なくともネット上は大騒ぎになるだろうから、安心して忘れて暮らそう。そして愛蔵版が必ず出版されるだろうからそれを新品で全巻揃える予定で、今は頁を閉じるとする。
 
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