とある小説サイト
……ストーリーは進んでいたが完結せず。中途半端な所で止まっていた。
とある漫画サイト
……ストーリーは進んでいたが完結ぜず。きりの良い所で止まっていた。
とあるビジュアルノベルサイト
……ストーリーは進んでおらず、かつサイトが無かった。
この手の物は以前にまとめて処分したと思っていたが、残党らしい。
折角なのでチラ見してから捨てることにする。
習字やら、絵画やら、テストの答案まである。
やはり個人的に目を引くのは作文だ。以前にも思っていたが、自分は子供の頃から日記的な文章はあまり書いてない。内容は酷いものの何らかの「創作」をしている。登場人物は擬人化や架空の人物が多い。
小学校高学年の頃「ただただ今日の出来事を書いてて何がおもろいねん」とよく言っていたのを覚えている。運動会の思い出だの何だの。実際に人の作文を読んでも面白くなかった。……それは他人に興味がないからでもあるだろうが。
例えばの話、「玉入れの玉になって空を飛ぶ」みたいに平和な創作物ばかり書けたら良かったのだろうが、往々にして「賑わう運動場をひとり見つめる動けないポスト」みたいな苦悩系に走るからか、先生受けは頗る悪かった。尚、驚くべき事にこの頃の自分はハイテンション陽キャだった。
自分の体験を書けと命じられても拒否した覚えがある。勝手な創作文を書くのは、何らかのエンターテイメント性の追求、と言うよりは単に自分が楽しむ為、と言うよりは先生と言う名の大人への反抗心で書いてた面は有るかと思う。
はっきり言えるのは。
当時の先生達と同年代になったであろう今、作文の添削を読んで思うに。
同じ『いい大人』の立場から対等に語らせてもらっても、多くの添削に納得がいかない。
一応これでも日本語表現について考える時間は長めの人生だったつもりだ。
駄目なパターンだ。まあ読むワケだな掃除中なのに。
長らく何も創作していない身だが、こういうお題物のアンソロジーなんて読むと、ちょっとばかし創作脳がむず痒くはなる。
もしも自分がこのお題を貰ったらどうするのか、と想定し始めるのである。
『お題』をこなす上で僕が大事にするのは、大きく分けて『必然性』『意外性』『文章力』だ。『文章力』の重要性は言うまでも無いことだが。
僕がアンソロジーに作品を提供する時には、最も重視するのは『必然性』だ。
例えば、お題が“ラブホテル”であったとして。
例えば、ちょっと反りの合わない二人が、飲んだ帰りに弾みで入ってしまったラブホテルで、気持ちを確認しあって目出度くゴールイン、というストーリーがあったとしたら。
おそらく僕は「家でやれ」と思うと思う。
そこがラブホテルである『必然性』が無ければお題がそれである意味が無い、と思うくらいには僕はクソ真面目だ。
『必然性』とは、キャラクターにとっての必然性ばかりではなく、読者にとっての必然性の方が大切だ。キャラクターがラブホテルでなければ何かが出来ない状況にいる事ではなく、或いはそれも含む何らかが、読者にラブホテルであるからこそ感じられる何かをもたらす事がお題の肝だ。
必然性を考える時、ラブホテルというお題はとてもハードルが高いと気付いた。
そうでなければならない理由が少なく、そして詮無いのだ。
突然に雨が降ってきてそこしかなかった?
人目を忍んで会えるのがそこしかなかった?
刺激的だと雑誌で見て行きたくなった?
背伸びしたくて誘ってみた?
弱い。どれも必然性が弱い。
反対にハードルの低いお題を考えてみるなら「お酒」とかかと思う。
酒というのは、飲みにいかないかという一言で簡単にシチュエーションが作れたり、口を割らせたり、記憶を飛ばしたりできる。凄い戦闘能力のキャラクターにも容易にピンチを作ることが可能で、拉致監禁もし放題だ。またファッショナブルゾーンでシェーカーを降らせたりも、オリジナルカクテルに意味を込めてサプライズすることも出来る。もしもウルトラCを狙いたかったらお屠蘇とか醸造に手を出しても良いかも知れない。とにかく、酒であることの必然性が見つけやすい。
『必然性』が見込めないとなると『意外性』に賭けるしかなくなるのだが、そこに何か展開を盛り込もうとしてもバリエーションがまた少ないのがラブホテルだ。
知り合いと会ってしまった?
騙して連れてこられた?
潜入調査することになった?
それらには特に目立った意外性は無い。逆に意外性が十分なアクシデントを加えると結局「そこラブホでなくても良かったんじゃないの?」というくらい明後日の方向へストーリーへ脱線しそうだ。
根本から考え方を変えなければならない。
思考の途中経過をスッ飛ばして、結論から言うと。
恐らく「ラブホテル」のお題を貰った僕が書くのはギャグエロ作品になる。
キャラクターはストーリー中で、ラブホを舞台にしたコント劇を演じる羽目になるが、実はモノホンの二人だったため台本をこなしつつも裏では勃つや勃たんやの小競り合いをしているというお色気ギャグ。ラブホである必然性は作中劇の台本に盛り込む努力をしつつ、最後はちょっとシリアスにマジギレ台本無視で啖呵を切っちゃう冷や冷やシーンを入れつつ大団円、周囲の反応と後日談はまたギャグで締める。
詰まり、必然性と意外性を担わせる箇所を根本的に変えてみた。
意外性についてはシチュエーションと作風自体という全体に背負わせる。
勿論、これで実際に完成させたらどれくらいのクオリティまで行き着けるのかなんて分からない。
でも、この路線なら原稿を提出した後で誰かとネタが被っているという事は、まずないと思う。
自分が結構ネタ被りを怖れているんだといま気付いた。
アンソロジーを手にして、この話はさっきのあれとほぼ同じ展開だな、と思うこと、思われることを避けたがっているんだろう。それは多分、次々と新しく現れる色んな景色にずっとわくわくしていたいからだろう。「そうきたか!」と言いたいし言われたいんだろう多分。
そう思うとこれ、ラブホテルというお題自体が失敗……いや、そこはハードルが高いと思わなければ駄目か。やれば出来ない事はないはずだ。きっと僕とは全く違うひらめきを持った人がいて、僕には思い付きようもない話を持ってくるんだろう。
「こうではないというならば対案を示せ」
そう自分に投げかける所から始まるこうした想定遊びは、自分の難儀さを逃がす謂わばガス抜き遊びだ。人にはあまり言わない様にはしてきたが、僕は脳の特性上、自他に対して分析的かつ批判的なアプローチをする傾向がある。部活でトレーニングなんかをする時には評価や難点の指摘は役に立つものだったが、大人になったら活用するシーンなんて殆ど無い。なので偶にこうして無駄なエンジンの空吹かしでもしてるんだろう。
自分より背の高いサトウキビの畑は、距離の感覚を狂わせた。もうどれほど分け入ってきたのか。朝から居るが今は日が高い。暑い。
地面から昇ってくる湿度が土臭くて咽せそうだ。場違いなワイシャツが汗で首筋に絡みつく。
作物を掻き分けて進み、見上げると、がさついた緑の単子葉が重なって思わせぶりに空を透かしている。くらりとする。足が重い。
期待した通り、たった一人で行き倒れられそうだ。
彼がここに来る切っ掛けはつい昨日。夏の過酷さとは切り離された快適なオフィスでのこと。新製品です、と差し出された菓子箱の中にあった小さなパンフレット。
完全有機栽培のサトウキビから作られる自然な甘味。そんなキャッチコピーは読みもせず、大規模農場を見下ろす航空写真に心引かれた。一面の黄緑色。
死ぬなら都会の香りが微塵もしない場所でと常々思っていたのだ。
うだる。このまま脱水症状で逝けるかもしれない。歩くのをやめて寝転がる。深呼吸すると、地面付近に溜まった有機物の匂いを濃く感じて嘔吐きそうになる。黄緑の底から青空の欠片を見上げる。
「何してるんかい」
突然の老人の声に肩が跳ねた。このだだっ広さで人に会うとはまさかだ。身を起こす。
「貴方こそ何を」
「バッタとか取っとるね」
「はあ。そうですか」
長いどた靴も、泥の汚れも、見るからに貧しい農家のおばあさんだ。彼女は勝手に隣へ腰掛けてきた。じっと覗き込まれる。
「あんたねえ、覚悟を決めた顔をしとる人は、死に神も避けるよ」
動揺が先走り、何の話ですか? と白を切る勇気が出なかった。
「なぜ、分かります」
「あたしはもうそういう領域に入ったんさ」
人生経験が深く刻まれた皺だらけの顔に頷かれ、見透かされた不快よりも、ほっとした。所詮は見知らぬ関係だ。
「仕事がつらくて。しかし辞められる立ち場でもないので、それで」
「そら困ったな。ふーむ、困ったあ……」
まるで自分の悩みの様に老婆はうーんと唸り込んだ。
「困りますか?」
「だってあんた、生きる死ぬゆうのはそうそう気ぃ変わらんもんだろし」
その通りだ。下手な慰めを言わぬのはなるほど、年の功か。
貴重な聞き手を得て、肩の力が抜けた。
「我が社は『人生を幸せにするお菓子を』とかいうスローガンのメーカーで……笑えますよね。私すっかり菓子嫌いになりました。ついでに人生も」
老婆は、はっはっと高らかに笑った。
「菓子ねえ、この辺に生えとるのは全部材料みたいだけど? ま、こんな上等なもの口にしたことはないね。あたしらのお菓子はみんな大体これだったわ」
取り出されたビンには、カサカサと乾いた音を立てるバッタが十匹くらい入っていた。
しわしわの老婆は、少し昔の事を語り始めた。この一帯は村人にとっては先祖伝来の農地で、自身も何十年も命を注ぐように丹精込めて世話をしてきたと。各々の村人が多様な作物を作り、助け合って暮らしていたと。
「でもなあ、みんなやっぱり、お金詰まれたら土地売ってしまったんよなあ。あたしは死んでもここ離れられんから、今はひとりぼっちよ」
「寂しいですね」
「そうねえ。だからこれは思い出の味なのよねえ。ほら、一個あげよう」
バッタは黒ずんで軽かった。
「いえあの……」
「揚げたらカリカリで美味しいし、栄養あるし。エエおやつよ」
老婆が躊躇なく一匹を口に放り込むので、やむなく食べてみる。香ばしく、えびせんに近いが。
全く旨い物ではない。
彼女らはどういう気持ちでこれを常食したろうか。これを食べようと思えるほど自分は死ぬ気で働いていたろうか。
帰ろう。
立ち上がって礼を言う。
「いい顔んなったねえ」
「おかげさまで」
憑き物が落ちた心地がする。死に損ねたようだ。
「……命を差し出すと言っていたのに、なぜ避けるんでしょうね死に神は」
老婆は吹き出しだ。
「そらあんた、面白く無いからさあ。そんな捨てられるゴミのようなもん」
スマートフォンの電源を入れてGPS機能をONにするだけで、程なくヘリコプターの羽音が聞こえた。近くに着陸する気配。やってくる複数の足音。
「ご無事でしたか社長」
「盛大に迷ったよ。すまないね。とんだ視察になって」
農道まで案内され、そこからはヘリで、あっという間にサトウキビ畑の上空だ。
密閉された窓からは眼下に、写真と同じ一面の黄緑が見えた。
「ここ、随分と農地集積したんだね」
「あ、ええそうですね。元は持ち主がバラバラで」
社長はふと振り返った。老婆は死んでもこの土地を離れないと言ったが、確かにこの農場は現在、すべて我社の敷地である。
「君、聞きたいんだが、ここの農地買収は……」
その時、ヘリの内部にゴウン! と重い轟音が走った。
何だ!? と搭乗者全員がコックピットを振り返ったが、残念ながらパイロットは操縦桿を握って青ざめるだけだったのである。
老婆はサトウキビの隙間から、空を、ヘリコプターの黒煙を眺めている。
「復讐ってのは面倒なもんだな。なにせ、生きたい奴でなきゃ殺す意味がない」
(以上、1997文字)
課題内容:「匂いで空間を表現」「失笑」「スイーツ」「上限2000文字」
発病。
文字数よりも、
ラストシーンまで全行程のあらすじが貫通した事のゴール感がデカい。
たまーに、この後、大つじつまが合わない祭が開催される。
それはある種、縛りではなく導きですね。
そういえば、グルメリポーターが新米の内は『おいしい』って単語を禁じるっていう訓練法を小耳に挟んだ事があるよ。同じ事なんだね。
それは少々ユーモラスだが的確なオノマトペでもあり、また言いようによっては硬派なカタカナ語の響きを持てる。
しかしそれは感覚的なものであり、どう使えばクスッと笑って感心できるか、又あるシーンではちゃんと完全シリアスであれるのか、では現実にはどれくらいフォーマルな場では使わない言葉なのか。全てのさじ加減は辞書にない。
ああ他国言語なんて使いこなせる訳がない。
自国言語では態とずらして楽しんだりする、その遊び場がきっとそこにもあるのだろうけど
「420文字まででバッドエンドの話」
※ルール:地の文に『二人は末永く幸せに暮らしました』 台詞に「もう一度キスしたかった」を入れるものとする。
<提出作品>
二人は末永く幸せに暮らしました、それは何もない宇宙空間で一万回も再生した絵本の結末だ。そんな、過去には無用と判断していた屑データばかりが無聊の慰めで、逆に最重要項目に設定されている自分の位置情報こそが今となっては無意味だった。爆発で艦外に放り出された兵器の回収などコストも見合わない。お伽話の姫と彼の共通点は嘗てキスで目覚めた事くらいだ。慣性が体を無音の彼方に押し流し続け、周囲の僅かな光をセンサーが捉え、そうして漂流軌跡がメモリに上書きされていく。絵本がいま消えた。物語より何度も再生した一番古い記録も今に塗り変わるだろう。「おはよう私が君の開発者だよ」鮮明だった笑顔がもうすぐ座標の羅列に置き換わる。その間際に最後の再生、初めて目を開く前に受けた唇の摂氏。スピーカー通電。「もう一度キスしたかった」浪費音声出力。思い出のない自分にはバッテリーも無くていい。タイムの桁が何度振り切れても末永く一人。
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<以下、作成時思考順路記録>
作戦を練らねば。
先ず、決めなければならない事柄、想定され得る事柄のまとめ。
●一度はキスしたんだよな?
→何故
●末永く暮らした二人と、キスした二人は同一人物か? そして時間軸は?
●お題ノルマの、台詞が先か、地の文が先か?
●バッドな理由(感情)はどのような?
(●ギャグかシリアスか?)
(●それらは人間か?)
以上の事柄をみるに、圧倒的に原動力と成り得るのは一度目のキスである。……と思っていたが、案外着想起点になったのは地の文の方だった。『幸せに暮らしました』部がですます口調なのが自分の作風ではなかった事から、引用文という事にしてまず抜け道を探そうとしたのだ。そうすると、幸せに暮らす事との対比をバッドエンドへ繋げられるとも考えた。
次に『末永く』というワードに途方もない時間という悲劇を連想した。これも良い構成材料に成り得る。
書いていくと、眠り姫だか白雪姫だかはキスと童話調の地の文が連携できるなあ、と最初の方にだらだら着想してたのが思いがけず嵌ったので後から入れ込んでみた。
因みにストーリーの裏話としては、キスの記憶はプロトタイプのデータを引き継いでいるだけで、ホントは本人(?)はキスしてない。
なんかこの課題、やってみると文章力というよりは大ぎりみたいな感じで、構成力とか発想力のトレーニングだった気がする。まあそれも文章力の一種か。
後から三名で作品を持ち寄った所、やはりこのお題のネックはですます口調の地の文だったようで、此処を如何に突破するかが最大の問題というか見せ場だったようだ。
(備忘録:「じゃあ次回2000文字くらいでやりますか?」)