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ココは元S-Silence管理人の日記とかエッセイモドキとかが徒然とごにょごにょしている空間です
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現在進行系の伝説漫画、ワンピースを597話まで読んだ。
今からその感想を言うがストーリーのネタバレはひとつもしない。只々、売上部数でギネス記録をもつ覇王漫画の力に納得したので、その力の内容にだけ感想を言う。


【全部が一続きの物語】
約61巻分、597話まで読んだがこれが物語の中程らしい。長い。週刊誌での連載なので仮に一年を52週とするなら11年以上は掛かってる計算だ。その間に一度たりとも物語が途切れる事はない。
長期連載物の多くは、1話読み切りの連続だったり、各エピソードごとにキャラクターと舞台のみを引き継いだ別の話だったりする。
1話読み切り系の長期作の代表は、同じ週刊少年ジャンプ内ならばこち亀だろうか。それはそれで毎回全く違う話を考えるのも苦労するとは聞く。
各エピソードごとに別の話なのは、あまり長期ではないが幽遊白書やドラゴンボール。あれらは、推測だが、私には人気が出たから物語を付け足したというものではないとは思えない。1エピソードが終わるごとに作者が新たな敵と物語を考案して作成しているよう思える。それはそれで、どうあっても面白く描き切るという凄まじいパワーなのだが、ワンピースはそれらと根本構造が違う。
物語全体が一度たりとも途切れないとはどういうことか。例えばもしも人気映画シリーズが2時間作品×60本作られているとするなら、対するワンピースはぶっ通しで120時間の上映をされているような感じだ。全部を見てなくては話が全く話にならないという巨大な起承転結の構造がある。
第1話から一貫して次々に据えられていく布石。台詞や行動、物の形に至るまでが、連載期間を何年も隔てた後々にも突如つながり感慨をもたらす。何処にも切れ目がない。
さすがは作品名がワンピースなだけある。


【ギャグとシリアスとリアリティ】
描き方の細部の話をすると、これはジャンル的にはいわゆる「ハチャメチャ冒険ファンタジー」に属するので、リアリティはあまり求められないジャンルではある。だが私は、シリアスの間にもギャグを挟むというだけでなく、そのギャグに因って起こる動きそのものまでが本筋にここまで絡んで良い世界観を初めて見た。
何を言ってるか分からねえだろうが俺にもさっぱり分からねえ。例えばクソくだらねえノリツッコミのお陰でピンチに陥ったとしても、そんな理由でピンチになるなという気がひとつも起こらないのだ。
それは或いは画力のお陰かも知れない。顔芸だけでも見てて楽しいし、楽しい時間には何の不満も湧かない。
それは或いは人物の性格メイクのお陰かも知れない。キャラは多数だが全員がド変態(いい意味)である。全員が徹頭徹尾ぶっ飛んでるならそれはもうその世界の法則だ。大体にして主人公はそれこそ冗談みたいな性格をしていて、それが物語の肝でもある。こうなったらもう何でもありだ。
勿論、優れたストーリーテラーの作として、物語の原動力となる謎や困難とその解消は理屈でもって鮮やかになされているのだが、それはそれ、これはこれ。その際に、別に都合よく助けが来たって良いし、別に「この間のジャンプ力を見る限りでは跳べる筈じゃん!」という亀裂に都合よく阻まれてしまっても良いのだ。展開も物理法則も、全てはご都合主義で織りなされるが、そういうリアリティなんて物語の面白さには関係ない世界があるのが改めてよく分かった。


【キャラの魅力を説得する力】
リアリティは関係ないと述べた矢先だが、この作品には超リアルな所がひとつある。
人の感情だ。多分それはこの物語の主成分だ。
これは先に述べた、全話が一つの物語だというのとも大きな関係があって、この物語は俗に○○編と呼ばれる各エピソードごとに読んでも面白くない。
実は私は、偶然リアルタイムで第1話掲載の週刊少年ジャンプを買っていた。読めば第1話だけで泣けるという大変に良い作品だったが残念ながらジャンプを買う習慣はなかった。
その後、何年かに一度は病院の待合などで偶然に手にして細切れに見たことがあったのだが、その時には、絵が上手いなという感想以外あまり持てなかったのだ。台詞回しや展開については大げさだなという印象を持っていたように思う。
まあ考えてみて欲しい。現実の人間でもそうだと思うが、台詞というのは誰が言ったかに因って印象が違う。パチンコで破産した人がゴロ寝で言う「俺はもう駄目だ」と、職場でずっと頑張りを見せてきた人が言う「俺はもう駄目だ」が同じ印象な訳がない。
細切れに読んだ時にはフーンと思った台詞は、第1話から通して読んでいって初めて心打たれる台詞になる。それはつまり長い物語を通じて私はその人をよく知っているという状態にあるからだ。
その人をよく知るのに必要なのは、先ずは会った時の印象。もっと深く知るなら、その人がどんな考えで以て、何が起きたときにはどう行動した人なのか、する人なのか。それは現実でも変わらないと思うが、この作品では現実には不可能なほどにそこを掘り下げる。何故なら「ハチャメチャ冒険ファンタジー」には、起こり得ない程の極限の状況と行動選択があるからだ。なんならその選択をさせる為にならどんなご都合主義をも厭っていない。そうやって非常に丁寧に一人ずつを根気強く掘り下げていく。どんなに滅茶苦茶なスケールで話が描かれても、常に人をリアルに描く事を中心に据えられているように感じる。だからこそ、キャラクターの感情と共にこちらの感情も衝撃的に動かしてくる、いわゆるボロ泣き回が訪れる。そのエネルギーは他の漫画に類を見ない。物語とは緊張と緩和だが、これはまるで長い時間を掛けて限界を超えてもまだ引っ張り続けたゴムがその緊張の末に大爆発するかように一気に弾ける。記憶を消してもう一度読みたいという人が居る理由がよく分かった。


【というわけで】
私は半分、というとてもキリの良い所まで読んだ。冊数にすると半分ではないのかも知れないが、これが半分だと確信できる「区切り目」までを読んだ。なので、以後は完結するまで読まない事にする。本当はリアルタイム連載時にちょこっと先まで見た事があるが、この際なかったことにする。
巷では現在96巻まで販売されており、その展開や作者の発言から2023年くらいで完結と予想されているらしい。それまで後2~3年。それは非常にこの「区切り目」にふさわしい期間なので、私も完結までぶっ通せるようになるその時まで、しばらく続きには進まない事にする。
もしかして完結したら新聞沙汰になるんじゃないか。まあ少なくともネット上は大騒ぎになるだろうから、安心して忘れて暮らそう。そして愛蔵版が必ず出版されるだろうからそれを新品で全巻揃える予定で、今は頁を閉じるとする。
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