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ココは元S-Silence管理人の日記とかエッセイモドキとかが徒然とごにょごにょしている空間です
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薄暗い朝のような緑の澄んだ時間帯、ひと気のない田舎の小さな舗装路をゆく途中で、そこを通りすがった。左手に神社の入口の様な石の構えがある。それを潜った向こうには森に分け入る山道がある。
その石の構えの脇には品の良い清々しい女性が居て、若くも無く、年寄りでも無く、恐らく和服を着ている。
彼女に問うた。
「宜しいか」
「はい。今日は誕生日でいらっしゃいます」
わざわざ行かなくても良いものを。そう思いながらも、私はただ正しくあることを選んだのだ。
そこへ踏み入ってまず、左手にある浅い色の苔の厚く覆う小さな溝に片手を差し込み、流れているきれいな水を掬った。そして両手と口を清めて薄暗い山道を登りはじめると、湿った枝で出来た細い蛇が降ってきた。さすがにこれは本命ではないと分かったので、有り難く首に回して掛けておくとする。
道を上ると、腕より太い蛇が向こうから下りてきた。結構な迫力があったので、
「誕生日だそうで。お慶び申し上げます」と告げてみた。太い蛇は引き換えして案内をし始めた。ゆっくりとゆく蛇を追う。蛇は、行く手の地面を薄く覆って下りて来る清流を掻き分けながら上る。
水を進む蛇。それに倣い、首に掛けていた細い枝の蛇の尻尾を掴んで、下ろしたその頭で清流を割りながら歩いた。それがとるべき礼だと思うのだ。
太い蛇に連れられて洞窟に入る。狭い穴は入った直後に右折して、振り返ったそこが祭壇だった。赤く光っていて、何らかのシルエットがあるような気もした。
そこに居たものの姿はわからないが、間違いなく恐ろしいほどの蛇だった。これが本命なのだと分かった。
「誕生日だそうで。お慶び申し上げます」
それは、よくここへ来れたな。と言った。その意味を正しく汲んだので、怖いです、と言って圧力を受けた分だけ後ずさった。
かつて私達がこれを叩き伏せたように、私はきっとこれに勝てるだろう。だからいま感じているものは身がすくむ命の危険への恐怖ではなく、目上のものに頭を下げる気持ちだ。ただただ怒らせたくないのだ。
以前とは違い神聖であるこれと戦うことは望ましくなかった。今の位置では簡単に退路を塞がれるし、方向転換を強いられる逃走も不利だ。もう一度、怖いですよ、と告げつつじりじりと洞窟の入口まで移動した。私が死闘を繰り広げる気がないのを知ってか知らずか、ゆっくりと入口の所まで追い掛けて進み出てきていたそれが、こう投げ掛けてきた。
私を描いてみろ。



私は目を覚まし、まだ暗いなと思ってもう一度寝てから目覚ましを聞いたかも知れない。
そうしてあれは人型であったとも思った。
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