表通りを歩いていると何人ものやくざに追い抜かれて不思議に思う。
脇道に入ろうとすると、やくざの偉い人っぽい男に行く手を阻まれる。
他の道を通れと言われるので、この道の建物に用があるのだと伝える。
男は言う、ああ、柔道の稽古に行くのか、その師匠なら俺のおばさんだ、
通れ、周りの奴等は煩いだろうが、気を付けて行けよ。
さて、道中ちんぴらが一杯追いかけてくるので、
逃げ走っては、追いついてきた奴を投げ飛ばす。
赤井英和っぽいヤツも追いかけてきた。
あれは投げても転けないだろうなあ、厄介。走る。
何とか撒いて、先生のアパートの裏まで辿り着く。
表に回る途中、外付け階段の横にある雑草地に
柵で小さな囲いがしてあった。
その中に植わっている九匹の猫が
きゅーと瞳孔を細くしてじっと此方を見ている。
あれ、猫ってこんなんだっけ。茎あるけど。
緑味のイエローをしたガラス玉の瞳の中に、黒い瞳孔が縦に、きゅー。
まあいいか。
階段を登る為に建物正面へと向かう。
張ってあるロープを一本跨ごうとしたら、その上にも猫が生えている。
近付くと丸かった瞳孔が細くなった。
ロープから緑のトゲが生え始める。アスパラガスの先端に似ている。
跨ぐなと言うのか。トゲはゆっくりではあるが伸び続けているようだ。
ロープに靴の裏を付けて、刮げるようにトゲを折る。
階段を登り、アパート二階の先生の家の扉を開けると、
家の中の床に、先程の緑トゲの群生地がぽつりぽつりと出来ていた。
げ。もしかして先生の部屋は既にトゲだらけで、
先生が串刺しだったりしたらどうしよう。
とりあえず自分は早めに逃げよう。逃走決定。
階段を下りた。
一方その頃の先生は。
うちの猫は大会前に足の裏の垢を取るのが大変で、
ちゃんとトゲを踏んでいてくれるかしら。
これで済めば手入れが楽なんだけど。
大丈夫、うちの猫はあのトゲでちゃんときれいに取れるから。
とまあ、見知らぬ誰かとお茶を飲みながら談笑していた。
いつの間に猫役。